HUNTER×HUNTERにおいて一般にはヨークシン編が最も評価が高いのだが、個人的にはキメラアント編が作中史上最高の完成度を誇るストーリーだと思っている。キメラアント編があまり評価されていない背景には、本編における度重なる休載もあってグリードアイランド編までは読んだけどその後はあまり読んでない人が多い、ということがある。
HUNTER×HUNTER好きでありながら、キメラアント編を読まないのはかなりの損だと思う。キメラアント編のどういった点が具体的に優れているのかを三つに分けて見ていくことにしよう。
とにかく長い
あまり知られていないが、キメラアント編はそれまでのストーリーに比べてかなり長期間に渡って展開された。それぞれのストーリーを話数にすると次のようになる。
- ハンター試験編
- ククルーマウンテン編
- 天空闘技場編
- ヨークシン編
- グリードアイランド編
- キメラアント編
- 会長選挙編
1話-38話
39話-43話
44話-63話
64話-119話
120話-185話
186話-318話
319話-340話
※どこからどこまでを~編とするかは微妙な問題なので、参考程度と認識してもらいたい
こうして見ると分かるが、ヨークシン編やグリードアイランド編が60話前後なのに対しキメラアント編は合計で133話ある。この話数はHUNTER×HUNTER全体の3分の1以上を占めており、このことからもキメラアント編がいかに長いストーリーだったかが分かる。
長ければ良いと言うものでもないが、キメラアント編はメルエム誕生前と誕生後でストーリーの雰囲気が大きく変わるので中だるみの感はなく、むしろ終始緊張感が保たれているという印象だ。
そうなるとストーリーが長いぶん、物語に奥行が出ていて面白く感じられる。
ブラックなゴン
キメラアント編以前のゴンは紛れもない善人で、いわゆるどこの漫画にでもいそうなキャラクターといった雰囲気だった。もちろん善人という以外に多くの側面を持っており、そうした面がゴンに他の漫画の主人公たちとは異なる魅力を与えていた。
しかしヨークシン編でゼパイルが言っていたようにゴンの本質は必ずしも「善」ではない。
グリードアイランド編までは善人以外の面を見せることが無かったゴンだが、キメラアント編ではそれまでの雰囲気とは少し違うゴンを見ることができる。
メルエムの人間性
キメラアント編中盤以降の主人公を一人挙げるとしたら、それはキルアでも無ければゴンでもない。間違いなくメルエムだ。キメラアントの王として生まれたメルエムの誕生当初は力のみを頼みとした暴君でしかなかったが、コムギとの出会いをきっかけに「他者」に興味を持つようになり、それが彼自身を大きく変化させた。
メルエムは誕生してから一度アイデンティティの喪失を経験し、死に際にアイデンティティを発見することになるのだがその過程によどみがなく、改めてHUNTER×HUNTERがただのバトル漫画で無いことを思い知らされた。